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「TSとTGを支える人々の会催し・公開講座(1999年4月4日)
「トランスジェンダーと人権」(公開)


       第58回「TSとTGを支える人々の会」催し・公開講座              「トランスジェンダーと人権」       話し手:伊藤みどりさん(女性ユニオン東京執行委員長)      大島俊之さん(神戸学院大学法学部教授)      野宮亜紀さん(「TSとTGを支える人々の会」運営委員) **************************************************************************  今年2月、4月4日を「トランスジェンダーの日」(Transgender's Day)に制 定することが、日本記念日協会に承認されました。女の子のお祭り、3月3日の桃 の節句と、男の子のお祭り、5月5日の端午の節句の間にあるこの日を、「性別と は何か」「男と女」だけではとらえきれない性の多様性について、広く社会的な理 解を深める日にしたいと思います。  第一回を記念し、公開講座「トランスジェンダーと人権」を開きます。今回のテ ーマは「戸籍」と「働く権利」です。それぞれの問題に明るい話し手をお呼びしま す。また、小会で当事者を対象に実施したアンケート調査結果から浮き彫りになっ た、心の性で生きることが困難な状況などを、就労と戸籍を中心にご報告します。  ぜひ、お友達やお知り合い、ご家族をお誘いあわせの上、ご参加ください。 〈話し手からのメッセージ〉 ◆伊藤みどりさんから……今では、知らぬ者はいないほどのセクシュアルハラスメ  ントの問題も、10年前は、職場で問題にすると「和を乱す」とか言われ、声を  上げた方が非難の対象にされてしまいました。今年施行させた「男女雇用均等法」  では、罰則規定こそありませんが、明文化され、各職場でセクシュアルハラスメ  ント問題を取り上げることがブームになっていると言ってもいいほどです。それ  は、裁判や活動など、女性たちの地道な活動の成果です。私は、フランスの哲学  者、E・バタンテールの著書『男は女 女は男』(筑摩書房)を読んで、「これ  からは男女の相違より、類似が強調される両性具有の時代になる」という主張に、  強い共感を覚えました。トランスジェンダーの皆さんは、時代の先駆者です。だ  からこそ、いろいろな壁にぶち当たるけど、闘ってそれぞれの幸せをその手につ  かんでほしい。闘い方には、いろいろな方法があります。「男女雇用均等法」は  性のグラデーションには配慮しないで作られていますが、「トランスジェンダー  の働く権利」を高めるために使えるかもしれません。これまでの女性たちの活動  をご紹介しながら、一緒に可能性を探っていきましょう。 ◆大島俊之さんから……今から20年ほど前、大学院の博士過程を終えて大学の教  員になったばかりの私は、大学の図書館の薄暗い書庫の中で、フランスの判例集  を読んでいました。偶然、ある判決を目にしました。ある当事者が、自分は女か  ら男に変わったので、戸籍(フランスでは身分証書と言います)の性別記載を男  性に、また名前を男性風のものに変えてほしいということを、裁判所に対して求  めていました。この時に、「トランスセクシャリスム」というフランス語を覚え  ました。理解できない事柄に出会うと、理解したいと思うのが自然な流れです。  それから、性転換について少し医学的な勉強をし、さらに法学的な勉強をしまし  た。そして、1982年に、民法学者の集まる各種の研究会で、性転換に関連す  る法的な問題について、何度も研究発表をしました。しかし、何の反響もありま  せんでした。1983年には、法律雑誌上に集中的に論文を発表しました。一人  のお医者さんが手紙をくれ、一人の週刊誌の記者が取材に来ました。しかし、民  法学者からは、何の反響もありませんでした。それから、むなしく時が流れまし  た。2年ほど前に、フランスから帰って来ました。日本でも、少しずつですが、  状況が変わりつつあるようですね。民法学者以外の方々に対して、性転換のお話  をさせていただくのは、今回が初めてのことです。 ◆野宮亜紀さんから……「支える会」で今年1月〜2月に実施した当事者へのアン  ケート結果については、今年3月21日に開かれたGID(性同一性障害)研究  会(会長/埼玉医科大学総合医療センター形成外科原科孝雄教授)で発表しまし  たが、今回は特に就労や戸籍に関わる部分の結果に重点をおいて紹介します。 ☆当事者・家族・パートナーの方々へ                     今回の催しは、マスコミの取材を含む一般公開の催しです。参加者のプライバシー については会としてできる限りの配慮は致しますが、皆様におきましても各自一層 のご注意をされた上でご来場ください。 ************************************************************************** ○取材を希望するマスコミ関係者の方は必ず事前の申し込みをお願いいたします (事前のご連絡がない場合、取材をお断わりする可能性があります)。また、客席  やロビー、会場 周辺などでの参加者に対する取材、撮影などはご遠慮ください。        ○一般の方は予約は必要ありません。                    ○取材申し込みをされた方以外は、会場へのカメラ、ビデオカメラ、テープレコー  ダーの持込みは禁止とさせていただきます。                    ○他人に迷惑をかけるような言動をする方には、退場をお願いする場合があります。     ************************************************************************** 「TSとTGを支える人々の会」(Trans-Net Japan)とは  埼玉医科大学倫理委員会の答申発表をきっかけに、日本国内に性同一性障害のた めの自助支援グループがないのはおかしいという思いから発足しました。1996 年8月から、学習会や体験交流会、家族会などを行なってきました。普段の活動は、 プライバシーへの配慮から参加者やその家族、パートナー、支援者(医療関係者、 カウンセラーなど)に対象を限定し、その参加者は99年2月までに約500人 (公開時を除く)にのぼっています。 **************************************************************************  日時:1999年4月4日(日)開場10:45 開演11:00〜15:00      主催: TSとTGを支える人々の会 協力:FTM日本             会場: 杉並区商工会館・講堂 東京都杉並区阿佐谷南3−2−19                       03−3393−1501(場所の問い合わせ以外はしないでください)      参加費:1000円(資料代込み/カンパ歓迎!)              【問合わせ・連絡先】  ※変更したので、ご注意ください。                        〒156−0044   東京都世田谷区赤堤二郵便局留「TSとTGを支える人々の会」   ※住所には、必ず「赤堤ニ郵便局」と漢数字の「二」を入れて下さい。 ************************************************************************** 〈話し手紹介〉 ★伊藤みどり(いとう・みどり)さん……1995年3月、男女混成の既存の労働  組合に満足できず、6名の仲間と女性ユニオン東京を結成した。男性に間違えら  れる容姿で、子供の頃は、親にインターセックスではないかと思われていた。職  場などで、ずっと「女らしくない」と言われ続けた、差別体験を持つ。女性用ト  イレに入って、男性に間違えられて注意されたこともある。スカートをはくのは、  恥ずかしいと思っている。 [女性ユニオン東京とは]  ・女性の労働や雇用問題を気軽に相談でき、交流し、励ましあい、そして解決し   ていく力を育てあう女性のユニオンです。  ・職種や雇用形態を問わない個人加盟。相談から交渉、解決までの取りくみと、   女性の労働の権利を知る、知らせる学習や交流が主な活動。誰でも参加できま   す。  ・月一回の交流会のほか、オリエンテーション/学習会/ダベリングのクラブな   ど、いろいろ。  ひとりひとりの自主性に基づいた自由でオープンな運営をめざしています。「こ  こに来ると元気が出る」「楽しい」の声も。ボランティア大歓迎! ※トランスジェンダーなど、多様な性の人の参加もOKだそうです。 ★大島俊之(おおしま・としゆき)さん……大阪大学法学部卒業。その後、大阪府  立大学講師、助教授を経て、神戸学院大学法学部教授(民法専攻)に。カナダ・  ケベック州のラバル大学法学部客員研究員(1983年〜84年)、フランス・  ストラスプール大学法学部客員教授(95年〜97年)。  ◎性転換に関する既発表の論文   大島「性転換と戸籍訂正」法律時報55巻1号(1983年)  ☆大島「性転換と法−戸籍訂正問題を中心として」判例タイムズ484号  (1983年):フランス法、スウェーデン法およびドイツ法を紹介して、私見   を述べたもの。自分自身では、一連の私の論文の中で、これが最も重要だと考   えています(大島記)。   大島「性転換と婚姻」大阪府立大学経済研究28巻3号(1983年)   大島「ケベック法における氏・名・性別」大阪府立大学経済研究35巻4号  (1990年)   大島「スペイン法における性転換の取扱」神戸学院法学21巻4号(1992   年)   大島「性転換をめぐる法整備を」朝日新聞論壇1998年9月24日朝刊。 ★野宮亜紀(のみや・あき)さん……MtFTG(male to female transgender)。早稲  田大学心理学科卒。コンサルティング業。「TSとTGを支える人々の会」運営  委員。 〈司会〉 ★東優子(ひがし・ゆうこ)さん……1990年早稲田大学卒。93年お茶の水女  子大学大学院(心理学専攻)を修了後、セクソロジーを学びたいと思い、渡米。  ミルトン・ダイアモンド博士が主宰するPacific Center for Sex and Society  に所属。96年ハワイ大学大学院ソーシャルワーク学部修了。現在、お茶の水  女子大学大学院博士課程で人間発達学を専攻。98年3月より「TSとTGを支  える人々の会」オブザーバー、同年12月より運営委員メンバー。 **************************************************************************  トランスジェンダーとは                            広義には、自分の身体の性別やそれに属する社会的、文化的性別に対して何ら  かの違和感や不快感を感じている人。(狭義では、その中でも、反対の性での生  活もしくは、既存の性役割にとらわれない形での生活を望み、性転換手術までは  望まない人)。  **************************************************************************


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